今回不動産テックラボでインタビューさせていただいたのは、不動産クラウドファンディングサービス「COZUCHI」を運営するLAETOLI株式会社様です。
COZUCHIは、急成長中の不動産クラウドファンディング業界の中でも、累計調達額NO.1を誇る大人気のサービスです。
そんなCOZUCHIですが、最近中長期での運用をメインとした「中長期運用型(任意組合型)ファンド」をスタートさせました。
これまでは、短期間で比較的大きなリターンを狙う「短期運用型ファンド(匿名組合型)」がCOZUCHIの特徴でした。
従来とは異なる中長期的に安定したリターンを狙っていく「中長期運用型ファンド」をこのタイミングでなぜリリースしたのか。
これまでのファンドとの違いや特徴など、運営会社であるLAETOLI社様にインタビューさせていただきました。
かなり踏み込んだ質問もさせていただいたので、COZUCHIで既に投資をされている方や、不動産クラウドファンディングの投資に興味がある方は是非参考にしてみて下さい。
COZUCHIを運営するLAETOLI株式会社の武藤社長へのインタビュー内容を紹介
今回のインタビューは、実際に外苑前駅すぐのビルに入られているLAETOLI社を訪問し、代表である武藤社長にお話を伺ってきました。
早速インタビュー内容に入っていきましょう。
Q1.なぜこのタイミングで中長期運用型(任意組合型)のサービスを始められたのでしょうか?
まず投資家さんの観点から言うと、リスクのあるものに短期でバタバタ投資するより、長期的に安心して収益を得たいというお声があったことが大きいですね。
ずっとタイミングを見計らっていて、環境が整ったので今のタイミングで始めました。
これまではちょっと訳あり物件を安く買って、うまく加工してアップサイドを取るという、比較的利回りが高い案件を中心に匿名組合型で運営してきました。
ただ、本来不動産の特性って短期的なリターンを狙うものだけじゃなくて、もう少し安定して、長期的に賃料収入から安心して配当を受けていけるという要素があります。
不動産投資本来の特性を取り入れ、より中長期視点での資産形成が行えるよう、中長期運用型(任意組合型)のサービスを始めました。
Q2.従来の匿名組合型と比べて任意組合型は具体的にどのような違いや特徴があるのでしょうか?
やはり匿名組合と比べて、比較的中長期案件を想定しています。
利回りという意味では、やはり安心して長期的に収入を蓄積していっていただけるというのが投資家さんのメリットですね。
あと、大きく違うのは「倒産隔離効果」が期待できる点でしょうか。
厳密には1号事業者が実際に倒産して、任意組合の不動産に対して何かしらの影響が及んだという過去の実績は私が把握する限り日本ではありません。
実際に倒産した場合は、もしかしたら1号事業者の固有財産として見られてしまって、倒産したときに別の債権者がそれを抑えにくるというリスクはあります。
ただ理論上、皆さんが固定資産税なども払ってくれたりなど、いろんな意味で倒産隔離の効果が期待できる可能性が高いといえます。
なので、1号事業者が何らかの事態に陥って会社が潰れてしまっても、皆さんの財産は守られる点は大きなメリットですね。
もう一つは、現物の不動産を持っているのと同じ税制上のメリットを得られる点ですね。
例えば、個人の収入があがった際に、建物の減価償却費を自分で損金で入れることで税負担を下げることも可能です。
あとは不動産は個人の方だと5年以上保有すると、譲渡したときに税率が約20%で済むんです。
5年以内で売却すると総合課税になってしまうので自分の個人の所得税に紐付いてしまいますが、長期的に持つことによって税制上のメリットも取れる点が匿名組合にはないメリットですかね。
Q3.任意組合ならではのデメリットや注意点はないのでしょうか?
匿名組合型が有限責任である一方、任意組合型は無限責任になる点が挙げられます。
無限責任という言葉だけ聞くと重く感じるんですけど、実際に不動産を所有しているオーナーさんと同じというだけです。
不動産を所有している方は当然無限責任で、自分たちが修繕のリスクや将来的に価格が下がったときのリスクも負うし、さまざまな不動産のリスクを負います。
ただ任意組合型ファンドの場合は、現実的に言って1号事業者が管理も全部やっていくので、そういったリスクを回避するための準備は行なっています。
ただし不測の事態が起きて建物の劣化などで、追加修繕が必要になりますという時に、皆さんに追加のお金を出してくださいという状況が起こり得なくもないです。
要は区分所有のマンションと同じように考えてもらえるとわかりやすいと思うんですけど、区分所有のマンションを自分が持っていて、修繕費と修繕積立費を管理費という形でみんな払うじゃないですか。
大規模修繕をやりましょうとなった際に、現実に古いマンションで起きていることは耐震基準が昔と違うので、大規模改修して耐震補給をしなければいけない。
そうすると皆さん、何百万ずつ追加で出さないと工事ができないような事態が、区分所有マンションでも起きていますよね。
これと同じようなことが起きる可能性というのはあるので、デメリットといえばデメリットかもしれないと言えますね。
あとは不動産の価格や価値は長いスパンで言うと変動するリスクがあるので、10年後同じような経済環境であるかというのは誰も分かりません。
そういった経済変動リスクというのは、中長期運用の任意組合型の方があるかなと思います。
Q4.従来の匿名組合型で中長期運用することはできないのでしょうか?
投資家さんの配当という意味では、従来の匿名組合型を中長期で運用しても、任意組合型で中長期の運用をしても特別変わるわけではないと思います。
ただ、匿名組合の場合は長期運用しても税制上のメリットが変わりません。
また、減価償却費メリットもないですし、匿名組合のように債権として持つよりも任意組合のように不動産として保有した方が評価損を取りやすいので、相続税効果も高いです。
あとは、不動産を事業者の倒産リスクから守ることも理由の1つです。
中長期で不動産を運用していくのに、そこに事業者の倒産リスクが介在するのはあまり本質的ではないですよね。
仮に事業者が倒産したとしても、皆さんの不動産の権利は残って守られるべきだと思うんです。
一般的に、任意組合型では不動産を事業者の倒産リスクから隔離することが期待できるため、中長期での運用を考えた時により安全性の高い資産運用を投資家さんに提供することができると思います。
そのため、比較的中長期に馴染みがいいのが任意組合、短期的な投資に馴染みがいいのが匿名組合という理解をして、今後整備していく予定です。
Q5.他社の任意組合型ファンドと比べた場合のCOZUCHIの優位性などはありますか?
優位性ではないのかもしれませんが、これまで任意組合型って比較的お金持ちのためのサービスだったんですよね。
例えば某A社などは1口1000万円のような人たちがターゲットでした。
扱っている案件は誰もが欲しがるような物件なので、当然ながら金額は高くて利回りが低いです。
なので、利回りを取りにいくのではなく、相続税効果を取りにいこうとしている人が多い傾向があります。つまり客層が違うんです。
一方COZUCHIは同じくデジタルマーケティングで会員様から資金を集めています。
ものすごい年収が高い人が税効果を取りにいくということが目的ではなくて、資産形成世代の方々が中長期で安定して利回りを取っていきたいという目的がメインです。
そのため、COZUCHIとしては多少マーケットより安く仕入れて、任意組合型としてはまあまあ高い利回りを配当しながら、さらに10年後多少のアップサイドがあるような案件を組成しようと思っています。
またCOZUCHIの匿名組合型は最低1万円から、任意組合型は最低10万円から投資できます。
投資の最低ラインを100万円や1000万円にしないのは、COZUCHIが持っている「一部のお金持ちではなく多くの方に投資の門戸を広げていこう」という思想からきているものです。
Q6.半年に一度の配当の金額はどのようなロジックで決まるのでしょうか?配当金がもらえないようなケースもありますか?
基本的には賃料収入です。賃料収入から固定資産税、修繕費や管理コストなどを引いた、フリーキャッシュフローを分配していきます。
土地を売るなどではなく、期中の家賃収入を分配していく形を取るわけです。
また配当額が入らない、または下がってしまう可能性があるとしたら、物件の稼働率が下がってしまうことが挙げられます。
テナントさんが抜けてしまうなどして賃料収入がその間減ったり、得られなかったりする場合は、分配金が想定より下がる可能性はあるかなと。
一応、稼働率に空室リスクというのをかけて設計していますから、なるべく当初の分配金を配当できるような考え方で運用していますが、想定を上回ってテナントが抜けてしまう場合などは配当が下がる可能性はあります。
ただ逆に、家賃の相場が上がったりすれば配当が上がる可能性もあります。
Q7.半年に一度売却の機会があるとのことですが、具体的にどのような手続きで誰に売却できるのでしょうか?
短期運用型(匿名組合型)でも、ファンドをキャッシュ化したいときに手数料をもらえれば、1号事業者が皆さんの持ち分を買い取りますよということはやっていました。
中長期運用型(任意組合型)に関しては、6月と12月の2回は売却できるようにして、自分の持ち分を現金化できる流動性は担保しようと思っています。
具体的には、売り主さんから売りたいっていうオファーが出た時に、僕たちが事前に買いたい人を募集して、買いたい人が見つかったら我々が買い取るっていう建て付けにしていこうかなと思っています。
売却時の手数料に関しては、匿名組合型の場合は3.3%かかる形にしていました。
任意組合型は、年2回のタイミングでの売却であれば売り手側に手数料はかかりません。
Q8.運用期間が長期にわたる分、不動産市況が悪化するリスクが考えられますが、リスクヘッジに関してはどのようにお考えでしょうか?
不動産市況にするリスクヘッジは正直僕も知りたいぐらいですけど(笑)
金融クライシスみたいなことは日本だとバブルの時にも起きましたし、2009年リーマンショックでも起きました。
ただ一番のリスクヘッジは市況が悪い時売らないことなんですよ。過去10年間ずっと見ていても結局戻るんです不動産って。
不動産は溶けてなくならないですし、紙屑のようになくならないですから。
COZUCHIの投資家さんは、銀行からの借金ではなく自己資金で投資をされています。
なので金融クライシスのような事態が起きた時に、私たちが勇気を持って「待ってください、今売ったら損します。」と投資家さんに言えるんです。
COZUCHIをやっている原点で、投資家さんは借金で投資していないから誰かに主導して売れって言われることもないし、主体的に売却のタイミングを決められるっていうのがCOZUCHIのモデルの良さでありリスクヘッジですね。
本当に環境が悪かったら売ることは誰にとってもデメリットなんです。マーケットが疲弊しているのに、需要が縮小しているのに売るってことは安く売るってことですから。
Q9.倒産隔離について、もし実際に1号事業者が倒産するようなことがあった場合、どのような形でその後ファンドが運用されていきますか?
倒産隔離でもし1号事業者がつぶれた場合っていうのは、おそらく1号事業者が代わりに管理できる1号事業者を連れてくるのが普通のプロセスだと思います。
じゃあもうその1号事業者も知ったことじゃないと、もう責任を負いたくないとなって、破産してしまったら破産管財人が当然出てきます。
破産管財人がなるべく債権者の立場に立って資金の回収をしていくときに、この破産管財人が主体でこの一号事業の運営者になれる人間を探してくるっていうのが普通の方法だと思います。
だから急に誰もいなくなって、皆さん自分で勝手に管理してくださいって状態になる可能性は極めて低いと思います。
もし本当に1号事業者が倒産した場合は、そういう形で別の事業者がファンドを継続していくっていうのが起こり得ることなのかなと思います。
Q10.従来型の短期運用型(匿名組合)ファンドをおすすめしたい人、中長期運用型(任意組合型)ファンドをおすすめしたい人の特徴などはありますか?
本当に理想を言えば、ポートフォリオとしての考え方を持ってもらいたいですね。
任意組合型を僕たちがもっと増やしていければ、投資家のみなさんがそこでベースの収入を取っていただけます。
一方で、高い利回りの匿名組合型ファンドが来たらそこに参加するといった形で、中長期の安定した利回りとアップサイドの両方をお勧めしていきたいですね。
Q11.今後どれくらいの頻度で中長期運用型ファンド・短期運用型ファンドを組成する予定なのでしょうか?
まだまだ試しながらなのですが、中長期運用型(任意組合型)に合う案件を見つけるのは難しくて。
皆さんが「COZUCHIだったら3%や2.8%などの利回りでもいいや」ってなってくれると、より取り込めるアセットが増えて来ると思っています。
やっぱり都内の本当にこざっぱりしたきれいなビルとかだと、今、入口のキャップで4%とか下手すると3.0%〜になってしまって、組成コストなども加味すると投資家さんに2%くらいしか配当できないんですよ。
もちろん大手で任意組合型をやっているところだと、2%でも投資家から調達ができているので、そういう客層はいると思います。
COZUCHIの今のお客さんがそこにすぐ投資してくれるかは分からないのですがこれから増やしていきたいですね。
7月から始まっているLAETOLIの今期としては、50億円くらいを中長期運用型(任意組合型)でやりたいという目標を立ててやっています。
短期運用型(匿名組合型)は、去年で250億円くらいの規模だったので、今年も同じくらいの規模はやっていきたいと考えていますね。
Q12.最後に今後の展望などあればお伺いできますでしょうか?
今後長期で物事を考えられるようになると、不動産はかなり強いなと思っています。
例えば今回組成した三軒茶屋の中長期運用型(任意組合型)の案件なんですけど、本当に長期であればアップサイドも狙える案件なんです。
このファンドは築古の区分所用のマンションで、下が商業スペースになっています。
今回は、商業部分を取得してファンドを組成したのですが、現在は人気のパン屋さんが入っていて比較的安定していますし、マーケットの9掛けで入れているとは思います。
ただ、もっと長期的な視点で考えて、老朽化してきて建て替えするタイミングまで見据えると、非常に価値が上がる資産だと思っています。
なかなかここまで長期でやれる事業会社っていないので、このようなファンドは中長期運用型(任意組合型)で取り組んでいきたいと思いますね。
あとは、この前買おうとして買えなかったんですけど、名建築ですね。
例えば京都の嵐山数寄屋の建築だったんですけど、もう築60年とかで。でも数寄屋建築なんてもちろん古いに決まってるじゃないですか。
古さが価値になるわけですが、数寄屋の建築を作った職人もほとんどいないので、今作ろうとするととんでもなく高くなってしまいます。
そのような物件は海外の投資家などに人気なので高く売却することも可能です。
なので、今後は「名建築シリーズ」みたいなものもやっていきたいなと思っていますね。
ただ儲かるだけではなくて、活動としても文化的価値もあるみたいなところに、投資のバランスもちゃんと整理させてCOZUCHIとして取り組んでいきたいなという風に思ってます。
最後に
今回は、飛ぶ鳥を落とす勢いの不動産クラウドファンディング「COZUCHI」を運営するLAETOLI株式会社代表の武藤氏にインタビューをさせていただきました。
改めて、COZUCHIの中長期運用型(任意組合型)ファンドの特徴を整理しておきましょう。
- 長期間ほったらかしで安定したリターンを受け取れる
- 年2回の配当を受け取ることができ、売却益も狙える
- 年2回中途売却もできるため、一定の流動性が担保されている
- 倒産隔離が期待できるため、事業者が倒産しても資産が守られる
- 減価償却や長期譲渡、相続税の圧縮などの税制上のメリットが受けられる
これまでの短期運用型(匿名組合型)ほど高いリターンは見込めないものの、ほったらかしで長期投資できるのは大きなメリットと言えますね。
これまで抽選やクリック合戦でなかなか投資できていなかった投資家の方にも、おすすめのファンドと言えます。
短期運用型ファンドへの投資機会も狙いながら、安定的で手間なく運用してもらえる中長期運用型にも投資しながら、安定性の高いポートフォリオを組んでみてはいかがでしょうか?
LAETOLI株式会社の武藤社長、お忙しい中インタビューにお答えいただき、ありがとうございました!
不動産業界の経験者やITなどに精通しているライターで構成されています。これまで、不動産×ITに関する100以上の商品やサービスを紹介してきました。不動産テックサービスの導入を検討している企業様や、不動産×ITに関する商品の利用を検討している個人の利用者様に向けて、出来るだけわかりやすく解説することを心がけています。