このページでは、介護ファクタリング(介護報酬ファクタリング)とは何か、わかりやすく解説します。

介護ファクタリングとは

「介護報酬ファクタリング」とは介護報酬債権を売買し現金化させる金融サービスです。

売掛債権を現金化するサービスを「ファクタリング」と言い、融資に代わる事業者の新たな資金調達方法として世界的にも多くの企業が活用しています。

ファクタリングの基本は、売掛債権を売却して資金を得るというもので、借金とは全くの別物。

入金される予定の「お金(売上金)をもらう権利(売掛債権)」を、売却することで本来の入金日を待つことなく資金を調達するという仕組みです。

介護ファクタリングでは、介護サービス提供で得た「介護報酬債権」をファクタリング会社に売却します。

これにより、国民健康保険団体連合会・社会保険診療報酬支払基金からの入金を待たず、スピーディな資金調達が可能に。

介護現場では、突発的な出費が発生することが少なくありません。

人の命に関わる業種であるからこそ設備の不良には早急な対応が求められますし、人件費をかけてでも十分な人員を確保することが必要です。

そんな時に「2か月先まで入金を待たなくても資金繰り問題を解決できる手段がある!」として注目されるようになったのが介護報酬ファクタリングなのです。

介護ファクタリングのメリット4選

介護ファクタリングには「従来のファクタリングが持つデメリットの影響を受けない」という大きな特徴があります。

ファクタリングには「2社間ファクタリング」「3社間ファクタリング」の2種類があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。

 

2社間ファクタリング

3社間ファクタリング

メリット

取引先にバレない

取引先にバレる

デメリット

手数料が高い

手数料が安い

取引先にファクタリングをしていることがバレると、今後の付き合いに影響が出る懸念が生じます。

しかしながら、秘匿性の高い2社間ファクタリングを選ぶと手数料がその分高額になる傾向にありました。

介護ファクタリングは、介護事業者・ファクタリング会社・国保連が絡む3社間ファクタリングです。

国保連にはファクタリングを利用していることは通知されますが、肝心の介護サービスの利用者さん達にバレることはありません。

つまり、両者のイイとこどりができるという訳です。

この非常に有益な特徴以外にも、介護ファクタリングには4つのメリットがあります。

  • 素早い資金調達
  • 信頼度の高い債権なので手数料が低い
  • 審査の難易度が低い
  • 借金ではないので返済や新たな資金繰りに困らない

それぞれの点について、詳しく見ていきましょう。

素早い資金調達

素早い資金調達が可能である点は、ファクタリングの一番のメリットです。

特に介護・医療業界は、実際のサービス提供から報酬の入金までに2か月以上の期間を要します。

そのため、資金繰りの調整が非常に難しい業種だと言われています。

事業所の運営費用や人件費はもちろん、介護サポート機器の導入や事業の拡大などまとまった出費が重なることもあるでしょう。

介護ファクタリングの申込み~入金の平均日数は、1日~2日程です。

国保連・社保連への連携がある関係で「即日入金」とまではいきませんが、それでも本来の入金スケジュールより圧倒的に速い資金調達が可能です。

また、融資と比べて用意する書類も少なくて済む場合が多く、比較的手間をかけずに申込みができる点もスピード感につながるポイント。

信頼度の高い債権なので手数料が低い

ファクタリング契約の手数料を決めるカギは「債権の信頼性」にあります。

債権が「回収の見込みが高く信頼できるもの」であれば、買い取る側のファクタリング会社側のリスクが少なく、手数料を抑えた契約が可能です。

医療・介護ファクタリングで取り扱う債権は、売掛先が国民健康保険団体連合会や社会保険診療基金といった国が管轄する機関です。

そのため、債権の未回収リスク・倒産のリスクはゼロといっても過言ではありません。

国を相手取った債権は、ファクタリングで取り扱う債権の中で信頼度は最も高いと言えるでしょう。

詳しい手数料の計算や金額の目安については後述しますが、介護ファクタリングの手数料相場は、0.25%~1%と非常に安価です。

余計なお金をかけずに、手堅く資金調達をしたいという方にはピッタリの方法でしょう。

審査の難易度が低い

融資やローン契約では「返済の見込みが立つこと」を審査していきます。

一方、ファクタリングでは「売買する債権の回収見込みがあるか」が審査ポイントです。

医療・介護事業者が売却する診療報酬債権や介護報酬債権は、ファクタリング会社が最も安心して買い取ることのでき「手数料を抑えてでも買い取りたい」と感じる債権。

初めての方や事業の運営が赤字の場合でも、ほとんどのケースでまとまった資金調達が可能です。

借金ではないので返済や新たな資金繰りに困らない

ファクタリングは借金ではないため、決算書の借入金への計上は不要です。

考え方としては「資産の売却」のようなもので、信用情報への影響も一切ありません。

そのため、銀行から融資を受ける予定がある・現在融資を受けているという方の「融資枠」を圧迫することもないのです。

月々の返済や新たな資金繰りへの影響を考えず資金調達ができるのは、ファクタリングの大きなメリットでしょう。

介護ファクタリングのデメリット2選

メリットが大きく、資金調達方法として非常に優秀な介護ファクタリングですが、いくつかのデメリットもあります。

事業者には、メリットだけでなくデメリットにも目を向けて総合的に、利用するか否かを判断しましょう。

取り扱い業者が少ない

需要の増加に伴いファクタリングを取り扱う金融業者は増えてきています。

しかし、介護ファクタリングという名称でサービス提供を行っている業者はまだまだ少ないのが現状です。

中にはファクタリングを装い貸付をする悪質なファクタリング事業者も少なくありません。

当記事ではこのあと、安心して利用できる介護ファクタリングの提供業者も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

利用のしすぎには注意が必要

介護ファクタリングは、手数料が安いため危機感なく繰り返し利用してしまう人も多いと言われています。

1度ファクタリングを利用すると、次に介護報酬が国保連や社保から入金されるまでかなり時間が空くことになります。

その間にまた資金繰りが厳しくなり、ファクタリングを利用するという流れができてしまいなかなか抜け出せなくなるのです。

便利なサービスではありますが、計画的に活用しましょう。

介護ファクタリングの手数料

介護ファクタリングの手数料相場は、0.25%~1%です。

200万円の債権を売却した場合、5,000~2万円が手数料として取られるイメージです。

参考までに、介護ファクタリング以外の資金調達方法の金利・手数料相場をまとめてみました。

方法

金利の相場

200万円を借り入れ、翌月完済した場合の利子負担

消費者金融からのキャッシング

3%~18%

5,000~3万円

銀行のカードローン

2.5%~14%

4,166~23,333円

銀行の事業者向けローン

4.8%~14%

8,000~23,333円

ノンバンクの事業者向けローン

2.5%~15%

4,166~25,000円

日本政策金融国庫

1.2%~2%

2,000~3,333円

上記は借金ですので、借りている金額と期間に応じた「金利」を払うことになるため、ファクタリングの「手数料」とは考え方が違います。

日本政策金融国庫など、介護ファクタリングよりも低コストで借りられる場所もありますが、あくまでも翌月に完済した場合です。

借入期間が長くなる場合には、介護ファクタリングを利用した方が負担額は少なく済むでしょう。

次に、同じファクタリングサービスと比較してみましょう。

種類

手数料の相場

200万円の債権を売却した際の手数料額

介護ファクタリング

0.25%~1%

5,000~2万円

ファクタリング(2社間)

10%~30%

20万~60万円

ファクタリング(3社間)

1%~9%

2万~18万円

手数料が低いとされる3社間ファクタリングでも、手数料の相場は1%~9%です。

医療・介護といった信用度の高い債権は、非常に安価な手数料で買い取ってもらえることが分かります。

介護ファクタリングの利用の流れ

介護ファクタリングの利用の流れは以下の通りです。

  1. 介護サービスの提供
  2. 国保連(社保連)へ介護給付費の請求
  3. ファクタリング会社へ申込・審査
  4. ファクタリング契約を結ぶ(国保連・社保連への通知)
  5. 介護事業者の指定した銀行口座に買い取り金額の「約8割」が掛け目として入金
  6. 国保連(社保連)からファクタリング会社に直接介護報酬が支払われる
  7. 入金確認後、買い取り金額の未払い分が入金される

このように、5番・7番と2回に分けて入金されるのが、医療・介護ファクタリングの特徴です。

入金額の具体的なイメージをまとめてみました。

【手数料1%、掛け目80%の場合】

ファクタリング契約を結び300万円の介護報酬債権を売却

数日以内:ファクタリング会社から1回目の入金・・・237万6千円

国保連からの支払日以降: ファクタリング会社から2回目の入金・・・59万4千円

総受取額:297万円  手数料額:3万円

このように分割した入金が行われる理由は、 レセプトの不備等で「請求額と支払額に相違が出る可能性」に備えた対応です。

一般的には、5番で買取額の7割~8割、問題がなければ7番で残りの2割~3割分が入金されます。

申込に必要な書類についても確認しておきましょう。

【必要書類】

  • 各種報酬請求書
  • 介護給付費等支払決定額通知書
  • 介護事業の指定通知書
  • 決算書
  • 介護保険審査決定増減表
  • 納税証明書
  • 印鑑証明書
  • 履歴事項全部証明書

上記はあくまでも一例です。

介護事業の指定通知書だけでなく、事業所のパンフレットやホームページアドレスを提示することで、事業の概要をより詳しく理解してもらうのもおすすめです。

介護ファクタリングが利用できる会社5選

ファクタリングは、比較的新しいタイプの資金調達方法です。

特に診療報酬債権を取り扱うとなると、社会保険診療報酬支払基金または国民健康保険団体連合会といった公的機関を交えた手続きが必要となるため専門的な知識やノウハウが必要となってきます。

後々のトラブルを防ぐ意味でも、医療・介護報酬の仕組みを正しく理解している業者を選びましょう。

介護ファクタリング提供している会社の中から、安心して利用することのできるおすすめのファクタリング会社を5つ紹介します。

三菱HCキャピタル

三菱HCキャピタル株式会社は、三菱商事株式会社・株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループを筆頭株主に置く、三菱グループの中核を担う総合リース会社です。

大手ならではの安心感はもちろん、業界最低水準の手数料率・原則非対面契約など、利用者に嬉しいサービスが豊富。

リコーリース

リコーリース株式会社は、事務機器や光学機器などを手掛ける日本を代表するメーカー、リコー(RICOH)系列の金融会社です。

ファクタリングだけでなくビジネスローンや集金代行サービスなど、幅広い金融サービス事業を提供しています。

ビートレーディング

ビートレーディングは、ファクタリング業界では歴史がある業者で、ファクタリングだけでも5種類のサービスを提供しています。

通常サービスより早期に資金化できたり、下請け業者の資金繰りに対応したサービスを提供したりと、資金調達の解決策を多く持っている業者です。

ビートレーディングの公式サイトはこちら⇒

ベストファクター

ベストファクターは、業界最低水準の手数料でスピーディな資金調達が可能な点が特徴のファクタリング会社です。

ベストファクターの運営会社はコンサルティング事業も行っており、ファクタリングを利用した方は財務コンサルティングも無料で利用できます。

本来であれば、有料のサービスであるコンサルティングがファクタリングに付帯している点は、他のファクタリング会社との差別化できるポイントです。

ベストファクターの公式サイトはこちら⇒

ジャパンマネジメント

ジャパンマネジメントのファクタリングは審査の通りやすさ、資金調達までのスピードが速いこと、対象売掛債権が幅広いことが特徴的です。

介護報酬債権や診療報酬債権など、医療系まで扱えるファクタリング業者はまだ少ない中、ジャパンマネジメントはほぼ全てを対象に幅広く対応しています。

2016年設立と比較的新しめではあるものの評判も多く、実績は問題ないと言えます。

ジャパンマネジメントの公式サイトはこちら⇨

介護ファクタリングまわりのQ&A

ここからは、介護ファクタリングにまつわる疑問をQ&A方式で紹介します。

Q.介護ファクタリングと医療ファクタリングの違いは?

A.

医療ファクタリングとは、国保連・社保連への報酬請求権を「債権」としたファクタリングサービスの総称です。

介護ファクタリングは、医療ファクタリングの一種であり、他にも、診療報酬ファクタリングや調剤報酬ファクタリングがあります。

医療ファクタリング

健康保険組合への報酬請求権をファクタリング会社に売却(債権譲渡)して資金調達する仕組み

診療報酬ファクタリング

医療サービス提供時に発生する「診療報酬債権」を売却

例)病院、診療所、歯科クリニック

介護報酬ファクタリング

介護サービス提供時に発生する「介護報酬債権」を売却

例)介護施設、放課後デイサービス等の事業主

調剤報酬ファクタリング

調剤サービス提供時に発生する「調剤報酬債権」を売却

例)調剤薬局

Q.ファクタリングの契約は、面談などを伴いますか?

A.

ファクタリングは、来店不要でも契約することが可能です。

近年は、非対面でできる業者も増えてきており、介護ファクタリングの取り扱い業者の中にも非対面契約をウリにしている業者も存在します。

しかし、すべての業者が非対面契約に対応している訳ではありません。

Q.介護ファクタリングで、報酬債権額以上の借入はできますか?

A.

ファクタリングで調達できる資金は「報酬債権額」から「ファクタリング手数料」を引いた額です。

融資ではありませんので、売却する債権額以上の金額を手にすることはできません。

ただし、ファクタリングは融資や借入ではなく、融資枠を圧迫することはありません。

どうしても資金が必要な場合には、その他の資金調達方法と組み合わせて使うと良いでしょう。

Q.通常のファクタリングではなく「介護ファクタリング」を選ぶメリットは?

A.

医療ファクタリングは、一般の売掛債権とは異なる手続きを踏むため、ノウハウがある業者を選んだ方が安心です。

「介護ファクタリング」という名称で介護業に特化したサービスを提供している業者、もしくは「医療ファクタリング」としてサービスを展開している業者を選ぶのがおすすめ。

まとめ

当記事では、介護ファクタリングについて詳しく解説してきました。

「介護ファクタリング」とは、医療ファクタリングの一種で介護報酬に特化した資金調達手段です。

  • 通常よりも2か月程早く介護報酬を現金化可能
  • 審査の難易度が低く、新規開業や赤字経営でも審査通過は十分可能
  • 借金や借入ではないので、負債にならない
  • 報酬債権額に応じて、少額~高額まで幅広いニーズに対応可
  • 担保や連帯保証人は不要で、利用者さんにバレるリスクはない
  • 低金利とはいえ、繰り返しの利用やファクタリングを前提とした経営には注意

介護ファクタリングの大きな特徴は、一般的なファクタリングよりも手数料が安価である点にあります。

キャッシングやローンといった方法よりも、低コストで資金調達が可能となるでしょう。

緊急性の高い資金調達にも素早く対応でき、上手に活用することで安定した経営を維持すれば強力な味方となってくれるでしょう。

介護報酬が入金されるまでの資金繰りに困っている方や、事業拡大・大型の物品購入などまとまった費用が一時的に不足している方は、ぜひ前向きに検討してみてはいかがでしょうか。