「退去費用」という言葉を聞くと、退去するときに必ず払うものという印象を受けますが、必ずしも払わなければならないとは言い切れません。
費用の内訳や契約内容を確認し、払うべきものとそうでないものを整理して考えることが大切です。
退去費用の相場はいくら?
まずは退去費用の相場を知り、自分が請求されている額が妥当なものなのか・将来的に退去する際にどのくらいの費用がかかる可能性があるのかを知る目安として役立ててください。
| 間取り | 退去費用の目安 |
|---|---|
| 1R・1K | 2~3.5万円 |
| 1DK・1LDK | 3~5万円 |
| 2DK・2LDK | 4~7万円 |
| 3DK・3LDK | 5~9万円 |
退去費用は、間取りだけで一律に決まるものではありません。
ただし、清掃や修繕が必要となる範囲が広くなるため、部屋の広さに比例して高額になる傾向があります。
賃貸借契約書の特約に退去時費用について明記されている場合には、物件の面積に対して1,000円/㎡~1,200円/㎡程度に設定されていることが多く、専有面積が広い物件ほど、退去費用も高くなりやすいでしょう。
| 居住年数 | 考え方のポイント |
|---|---|
| 1年未満 | ・故意 ・過失があるかないか ・経年劣化分がほとんど考慮されない |
| 3年程度 | ・壁紙は6年で減価するため、負担の目安は半分程度 ・設備や床材なども、経年劣化分が考慮されやすくなる |
| 6年以上 | ・クロスなどは借主負担がかなり小さくなる傾向にある ・通常損耗や経年劣化については、貸主負担と判断されやすい |
国土交通省が発表した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、経年変化や通常損傷は基本的に賃料に含まれるという考え方が示されています。
そのため、居住年数が長くなるほど、壁紙やフローリング材などの退去時の借主負担は減りやすいという仕組みになっています。
ただし、居住年数が長くなるほど、過失による傷や大きな汚れのリスクも高まるため長く借りているからといって、必ずしも退去費用が安くなるとは限りません。
特に、ペットの飼育や室内での喫煙、大きな破損などがある場合には、上記の相場よりも高額な請求となる可能性があります。
故意や過失による損傷は、退去費用の負担額を大きく左右するポイントになるでしょう。
退去費用に関するトラブルは多い
退去費用に関するトラブルは、決して珍しいものではありません。
国民生活センターには賃貸住宅に関する相談が毎年3万件以上寄せられており、そのうち退去時の原状回復に関する相談は全体の約4割を占めています。
具体的には、
- 想定していたよりも高額な退去費用を請求された
- 通常の生活によって生じた汚れやキズなのに、修繕費用を請求された
- 入居前からあったキズもかかわらず、修繕費用を請求された
- 敷金から高額な修繕費用が差し引かれ、ほとんど返金されなかった
といったトラブルが多く、消費生活センターも注意を呼び掛けています。
こうした状況を受け、国土交通省は「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を整備。
退去時における貸主・借主それぞれの負担範囲や、経年劣化・通常損耗と、故意・過失による損傷の違いなどについてわかりやすく示しています。
契約条件については、入居時・契約時の段階で十分に確認し、契約書や重要事項説明書を退去費用の支払いが終わるまでしっかりと保管しておくことが重要です。
万が一トラブルが発生した場合には、消費生活センターなどの行政機関へ相談することも、有効な解決方法の一つとして案内されています。
退去費用は払わなくていいものもある?
退去費用が高すぎると感じた場合には、まず請求内容の内訳をしっかりと確認することが大切です。
国からのガイドラインが示されている一方で、本来は貸主側が負担とするべき項目が混ざっているケースがあるからです。
退去費用の内訳や、借主側が負担するべき項目について確認していきましょう。
そもそも退去費用とは?敷金礼金との違い
まずは、それぞれの用語の意味をおさらいしましょう。
- 家賃の滞納や、借主に責任のある損傷が発生した場合に備えて預けておくお金
- 退去時には、未払い家賃や修繕費などを差し引いた残額が返金される
- 部屋を所有する大家さんに対してのお礼の意味で支払うお金
- 基本的に返金されることはない
- 退去時にかかる原状回復修繕、ハウスクリーニング、鍵交換、未納家賃の精算などをまとめたもの
- 敷金だけでは不足する場合、追加で請求されることがある
一般的に「退去費用」とは、退去時に発生するさまざまな費用の総称です。
基本的には、預けていた敷金から退去費用が差し引かれ、余った分が返金される、もしくは不足分が追加請求されるという流れです。
近年では、敷金・礼金0円という物件も増えてきており、こうした物件では、敷金として預けているお金がないため、退去時に発生した費用がそのまま請求されることになります。
退去費用として支払うべきもの
まずは、退去費用として請求されやすい主な項目と、その概要を確認しておきましょう。
| 項目 | 概要 | 費用目安 |
|---|---|---|
| 未納家賃、管理費の精算 | 未払いの家賃や管理費がある場合に請求される | 未納額による |
| ハウスクリーニング費 | 退去後の専門業者による清掃費用 | 2万円~ |
| 鍵交換費 | 鍵交換が必要となった場合の費用 | 1~2万円 |
| 借主の故意・過失による 原状回復費用 | ・タバコの煙による臭い、壁紙の変色 ・ペットの飼育による臭い、壁や床の傷 ・子どもの落書き ・床や壁のへこみ、大きな傷 ・故意、過失による設備破損 (備え付け家具、家電も含む) | 汚れや破損の程度による |
トラブルとなりやすいのが、「原状回復費用」の部分です。
原状回復と聞くと、壁紙や床材などを張り替えて入居時の状態まで綺麗に戻すことをイメージしてしまいがちです。
しかし、国土交通省のガイドラインにおける原状回復とは、通常の使用を超える使い方によって生じた傷や汚れを修繕することを指します。
日焼けによる壁紙や床材の変色や床の細かい傷といった通常の生活の中で生じた経年変化や通常損耗の修繕は、基本的に貸主負担とされています。
鍵交換費用やハウスクリーニング費用については、退去費用として請求されるケースが一般的ですが、必ず借主負担になるとは限らず、賃貸借契約書の特約内容によって扱いが異なる場合があります。
退去費用として支払う必要のないもの
退去費用としてどこまで支払うべきかは、大きく2つに分けて考えましょう。
1つ目は、「契約書にどのような内容が記載されているか」という点です。
鍵交換費用やハウスクリーニング費用については、契約書で「借主負担」と定められているケースが多いですが、どのような条件で費用が発生するかまで丁寧に確認することが大切です。
契約内容によっては、「〇年以上入居した場合」「喫煙が確認された場合」など具体的な条件が定められていることもあります。
2つ目は、「原状回復費用の内訳を確認する」ことです。
原状回復費用として借主側が負担するべきものと、貸主側が負担するべきものを正しく理解し、不要な項目が含まれていないか確認してください。
| 故意・過失による損傷 (修繕費用は借主側負担) | 経年劣化・通常損耗 (修繕費用は貸主側負担) | |
|---|---|---|
| 傷 | ・重い物を落とす、壁に何かを強くぶつけるなどしてできた傷 ・フローリングの割れ | ・床や壁の細かな傷 ・家具を置いたことによる床の軽微なへこみ |
| 汚れ | ・タバコによるヤニ汚れ ・食べ物や飲み物をこぼしたまま放置してできたシミ | ・日焼けによる壁紙の変色 ・家具の設置による壁紙の色あせ |
| 備え付け家電 | ・誤って壊したエアコン、換気扇、給湯器などの破損 ・不注意で操作ミスをして故障させた場合 | ・長年使用したことによる性能低下 ・通常の使用による自然な劣化 |
| その他 | ・ペット臭やペットによる壁や床の傷 ・子どもの落書き ・水漏れを放置して悪化させた場合 | ・通常の生活で生じる生活臭 ・畳やクロスの自然な傷み ・日常使用による設備の劣化 |
通常損耗や経年劣化については、原則として借主負担ではありません。
上記以外にも、ポスターを置いていた跡・下地ボードの張替えが不要な程度の画鋲やピン穴なども、通常損耗に含まれると考えられています。
国土交通省のガイドラインでは、次の入居者を募集するための設備交換や、見た目を整えることを目的としたリフォームについても、経年変化・通常損耗による修繕として貸主負担に分類されています。
一方で、「故意・過失による傷・汚れ・損傷」については、原状回復費用として借主側の負担になる可能性があると理解しておきましょう。
納得いかない退去費用はどこに相談すべき?
貸主側がガイドラインを十分に理解していなかったり、「どこからが借主側の過失による損傷なのか」という認識にズレがあったりすることで、トラブルにつながるケースは少なくありません。
納得できない請求を受けた場合には、一人で抱え込まず、第三者へ相談しながら客観的な意見を求めることが大切です。
退去費用について相談できる主な窓口を紹介します。
管理会社・大家さん・不動産会社
まずは、管理会社や不動産会社へ連絡し、必要に応じて貸主(大家さん)に確認を取ってみましょう。
管理会社や大家さんは、請求内容の内訳や修繕の根拠について直接確認できる相手です。
不明な項目がある場合には、その説明や判断の理由などを教えてもらうとよいでしょう。
また、不動産会社(仲介会社)に相談することで交渉の間に入ってくれるケースもあります。
感情的に判断するのではなく、「どの部分が借主負担とされているか」を一つずつ確認していくことが重要です。
消費生活センター・国民生活センター
消費生活センターや国民生活センターとは、消費者と事業者との間で発生したトラブルについて相談できる公的機関です。
消費生活センターは自治体が設置する相談窓口で、国民生活センターは消費者庁所管の独立行政法人です。
「退去費用に関するトラブルは多い」でも解説したように、国民生活センターには退去費用に関する多くの相談が寄せられています。
「188(いやや!)」は、最寄りの消費生活センター等につながる全国共通番号です。
無料で相談できるため、「まずは第三者に話を聞いてほしい」「請求内容が妥当なのか知りたい」と感じた場合にも利用しやすい窓口といえるでしょう。
必要に応じて、今後どのように対応するべきか具体的なアドバイスが受けられる場合もあります。
司法書士・弁護士
請求金額が高額な場合や、相手側の主張が強く話し合いでの解決が難しそうなら、司法書士や弁護士に相談するのも有効です。
法律のプロに相談すれば、契約内容や請求の妥当性について法的な視点から整理できます。
実際に依頼する場合には、相談料に加え、交渉や訴訟対応に伴う着手金・報酬金などの費用が発生します。
国の運営する「法テラス」では無料法律相談を行っており、同じ問題につき30分・3回まで利用が可能。
また東京総合法務事務所のように、退去費用の減額交渉を得意としている司法書士もいて、LINEから何回でも無料で相談できます。
払い過ぎに注意!自分は減額できる?
ADR(裁判外紛争解決)
ADRとは「裁判外紛争解決手続き」のことで、国が認定した第三者機関が間に入って、話合いによる解決をサポートする仕組みです。
不動産分野においては、不動産ADRと呼ばれる制度があり、賃貸借契約や原状回復など不動産トラブルに特化した相談を受け付けています。
裁判よりも費用や時間の負担を抑えやすく、当事者同士だけでは解決が難しい場合でも、中立的な立場の専門家を交えながら解決を目指せる点が特徴。
「いきなり裁判までは考えていない」「できれば話し合いで解決したい」という場合には、選択肢の一つとなるでしょう。
退去費用に関連する疑問
退去費用に関連する疑問を紹介します。

