ファクタリングとは、一般的に売掛債権をファクタリング会社に売却する金融取引です。
融資に代わる新たな資金調達方法として注目されており、近年では買取ではなく保証するタイプの商品やリバースファクタリングと呼ばれるサービス登場しています。
当ページでは「リバースファクタリング」にフォーカスを当て、サービスの仕組みやメリット・デメリットなどを分かりやすく解説します。
大手フィナンシャルグループ出身。外国支社や海外顧客の対応・海外のクレジットカード加盟店とのやり取りなど、銀行業務も含めた金融業全般に幅広く携わる。その後、育児と仕事の両立を求めライターへ転身。経歴を活かしつつもエビデンスに基づいた説得力あるライティングを心がけ、これまでに約200本以上の金融系記事を執筆。現在8年目。
通常のファクタリングについておさらい
ファクタリングとは、一般的に売掛金をファクタリング会社に売却することで事業資金を調達する金融取引の総称です。
簡単に言うと“物やサービスを「売った人」が、「後程お金が振り込まれる権利」を売却して早めに資金を調達するやりとり”を意味します。
所定の手数料がかかるものの、負債にならない資金調達方法として中小企業を中心に多くの人が活用しています。
リバースファクタリングとは
リバースファクタリングとは、発注者側が外注先(下請)への買掛金をファクタリング会社に代行してもらう金融取引です。
簡単に言うと“物やサービスを「買った側」が、ファクタリング会社を使って支払いを済ませるやりとり”を意味します。
利用者は、商品やサービスの提供を依頼する発注者側(買い手)です。
この点が通常のファクタリングとは逆(ファクタリング:売り手 リバースファクタリング:買い手)であることから、リバースファクタリングという名称が付けられています。
「資金繰りが厳しく、支払期日までにお金が用意できなそう・・・」
「支払期日を守れずに、取引先に迷惑をかけ関係が悪化するのは避けたい。」
「急に、支払日を早めるよう持ちかけられて困っている。」
このような時はリバースファクタリングを活用することで、取引先に払わなければならないお金はファクタリング会社が“立替え”という形で代わりに払ってくれます。
従来は「売り手側」しか利用できなかったファクタリングですが、「買い手側」をターゲットにおいたのがリバースファクタリングです。
「上手に活用することで、資金繰りの安定に繋がる」と、注目が高まっています。
リバースファクタリングの仕組み
リバースファクタリングは「ファクタリング会社が取引先に払うお金を立て替えてくれる」+「ファクタリング会社に手数料とお金を返す」この2本の柱で構成されています。
利用者である発注者側は、外注先から請求書を受け取った後に、ファクタリング会社に利用申込みをします。
通常のファクタリングと同様、利用に際しては審査が必要です。
審査に通過できれば、ファクタリング会社が代行して取引先へ支払いを済ませてくれます。
利用者側は、後日ファクタリング会社に「本来取引先へ払うはずだった金額」+「ファクタリング手数料」を払い、契約は終了します。
ファクタリング会社としては、手数料分の儲けが出るという仕組みですね。
イメージとしては、3社間ファクタリングに近い構造です。
取引先にリバースファクタリングを使っていることを隠すことはできず、3社間で納得して契約を結ぶという点は理解しておきましょう。
リバースファクタリングと通常ファクタリングの違い
リバースファクタリングについての理解をより深めるため、通常のファクタリングとの違いを図で確認していきましょう。
|
ファクタリング |
リバースファクタリング |
概要 |
債権を売買する金融取引の総称 |
債務の立替えを依頼する金融取引 |
利用者 |
物やサービスを売った人 |
物やサービスを買った人 |
手数料相場 |
2社間:10%~30% 3社間:1%~9% |
1%~5% |
手数料負担 |
利用者側 |
利用者負担or取引先負担 ↑ファクタリング会社により異なるが、原則利用者負担 |
種類 |
保証ファクタリング 貿易ファクタリング 医療ファクタリング (介護報酬、診療報酬、調剤報酬) |
なし |
ファクタリングは「手数料を払って、未来にお金を受け取る権利を売って早めに現金を調達する」ための契約。
一方のリバースファクタリングは「支払の義務をファクタリング会社に立て替えてもらう」ための契約です。
名称は似ているもののターゲット・内容は全く別の金融取引であることがわかるでしょう。
リバースファクタリングの3つのメリット
リバースファクタリングは、利用者側に3つの大きなメリットをもたらします。
- 支払期日を伸ばせる
- 業務の効率化が図れる
- 取引先へのデメリットがない
それぞれの点について、詳しく確認しましょう。
支払期日を伸ばせる
リバースファクタリング最大のメリットは“支払期日を伸ばせること”です。
取引先と「月末に支払」という契約を交わしていても、月末の支払はファクタリング会社が代行して支払ってくれます。
取引先との契約内容に関わらず、新たにリバースファクタリングで交わした契約書に基づいた期日で支払いをすればOKなので、期日を先延ばしにできます。
取引先との間で支払遅延を起こしてしまうと、信頼関係に傷が付き今後の外注に影響を及ぼすリスクが。
そうなる前に、リバースファクタリングを上手く活用し、決められた期日までにきちんと取引先にお金が届くよう手配するのは賢い選択です。
業務の効率化が図れる
リバースファクタリングは、支払先を一本化することでの業務の効率化という点でも良い効果を発揮します。
外注先への支払いは、都度「振込手数料」が発生します。
また、取引先が多くなればなるほど請求・支払いに関する事務的な作業が増え経理業務も複雑化するでしょう。
債務(買掛金)の支払いをすべてファクタリング会社に任せるために、リバースファクタリングを導入するというケースも増えています。
支払先を一本化することで、各外注先に支払う際にかかっていた振込手数料や事務的な作業を削減でき、業務の効率化が可能です。
取引先(外注側)へのデメリットがない
取引先への金銭的・事務的な負担を与えない点も、リバースファクタリングのメリットの1つと言えます。
取引先としては、販売した物やサービスの代金を確実に回収したいと考えるもの。
リバースファクタリングは、代金未払いとなるリスクをゼロにする取引先目線でも嬉しい金融取引です。
リバースファクタリングの手数料は、基本的に利用者(買う側)の負担です。
取引先(売る側)としては、「もらえるお金は同額」+「未払いリスクゼロ」デメリットがありません。
振込先などの提示は必要となるものの、複雑な事務的負担が強いられることもありません。
リバースファクタリングの2つのデメリット
リバースファクタリングは「買い手側」の資金繰り調整に役立つ非常に便利な金融サービスです。
しかし、デメリットもあるため利用の開始にあたっては慎重な検討が求められます。
リバースファクタリングのもつ2つのデメリットを、詳しく確認しましょう。
ファクタリング手数料がかかる
リバースファクタリングを利用して支払いを立替えてもらっている以上、ファクタリング会社に対して手数料を払わなくてはなりません。
手数料金額は、利用した金額の1%~5%が相場です。
ファクタリング会社への支払期日には「立て替えてもらった買掛金」に「ファクタリング手数料」をプラスして返すことになります。
支払いが間に合わない時には、遅延損害金や延滞金という名目で手数料が追加されるのが一般的です。
手数料のパーセンテージや期日を過ぎた際の対応については、ファクタリング会社によって内容が異なる部分ですので、契約前にしっかりと確認しておきましょう。
取引先がでんさいを導入していないと使えない
リバースファクタリングを利用する場合、発注者側、外注先側ともに電子記録債権(でんさい)を導入する必要があります。
電気記録債権・・・手形や振り込みに代わる決済手段で、債権の発行・譲渡・現金化をインターネット上で行えるもの。
利用には全国銀行協会の審査が必要。
通称、でんさい・電子手形
リバースファクタリングの利用は、利用者企業・取引先企業の双方がでんさいを導入していることが絶対条件となります。
どちらか一方でもでんさいの導入ができていないと、サービスの利用はできません。
現在、でんさいを導入している企業はそれほど多くはないのが現状です。
リバースファクタリングのためにでんさいを導入する際は、仕組みや利用方法を学ぶ必要があります。
また、取引先にもでんさい導入の有無を確認し、必要であれば導入を依頼しなくてはなりません。
リバースファクタリングの利用の流れ
リバースファクタリングの基本的な流れは以下の通りです。
- 発注者側(自社)が外注先(取引先)に商品やサービスの提供を依頼する
- 外注先は商品やサービスの提供が完了後、請求書を発行
- 発注者側は受け取った請求書をファクタリング会社に提出
- ファクタリング会社による審査
- ファクタリング会社が外注先へ買掛金を支払う
- 発注者側はファクタリング会社の指定する支払期日までに買掛金+ファクタリング手数料を支払う
このようになっており、基本的には取引先への連絡ややり取り全般はファクタリング会社にお任せできます。
契約後は、実際の期日や請求金額ではなく、ファクタリング会社と交わした契約に沿って動いていくことになります。
リバースファクタリングの会計処理はどうする?
リバースファクタリングの会計処理に、明確な決まりは設けられていません。
そのため、経理の方や会社で使っている会計ソフトによって対応にバラつきが出ることは避けられません。
ここではあくまでも一例という形でリバースファクタリングの会計処理・仕分け処理について紹介します。
- 取引先から物やサービスを仕入れ、後日支払うという債務ができた時
借方 |
貸方 |
||
材料仕入れ |
100,000円 |
買掛金※1 |
100,000円 |
※1買掛債務とは商品やサービスの提供を受けた後の未払いの債務のこと。
具体的な勘定科目は「買掛金」や「支払手形」など。
リバースファクタリングの場合は、「買掛金」が最適。
- リバースファクタリングを契約した時
契約時には、特に金銭の動きはありませんので会計処理は不要
- ファクタリング会社に「買掛金」+「ファクタリング手数料」を払った時
例1)
借方 |
貸方 |
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現金・預金 |
100,000円 |
材料仕入れ |
100,000円 |
支払い手数料 |
50,000円 |
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|
例2)
借方 |
貸方 |
||
現金・預金 |
100,000円 |
材料仕入れ |
100,000円 |
雑損失 |
50,000円 |
|
|
自身で科目を設定できる会計ソフトを使っている場合には雑所得の部分を「ファクタリング手数料」と書いてもOKです。
いずれのケースも、区分は「営業外費用」としてください。
大切なのは、「社内の関係者がきちんとリバースファクタリング関連の支出を正しく理解すること」です。
リバースファクタリングに代わるもの
リバースファクタリングに代わる「買い手側」の資金繰りを調整する手段に「請求書クレジットカード払い」があります。
「請求書クレカ払い」「請求書カード払い」とも呼ばれ、リバースファクタリングの最大のネックポイントである「でんさい」の導入が不要。
会計処理も比較的分かりやすいのが特徴です。
現状リバースファクタリングを提供する会社は少なく、みずほファクターなど一部に限られます。
その点、請求書クレジットカード払いのサービスは増加傾向。
万が一に備えアカウントを作っておけば、急場をしのげるとして事業者必見の資金繰りツールとなっています。
なかでも代表的なサービスは、支払いドットコムです。
興味がある方は、当サイトの支払いドットコム解説ページをご覧ください。
まとめ
当記事では、リバースファクタリングの概要や通常のファクタリングとの違いについて解説してきました。
- 買い手側の債務をファクタリング会社が立替えて支払ってくれるサービス
- 手数料は低く、1%~5%が相場
- 「支払期日を伸ばしたい」「支払期日を早めるよう依頼されて困っている」時に役立つ
- 買い手、売り手双方の企業が「でんさい」を導入していることが必須
通常のファクタリングが「売り手側」をターゲットとしているのに対して、リバースファクタリングは「買い手側」に向けた金融サービスです。
名称に“リバース”が入っているのは、対象が全くの真逆であることに由来しています。
物やサービスの買い手側の事業者で、支払期日を伸ばして資金繰りを立て直したいと考えている方は知っておいて損のない金融取引です。
手数料が安いため利用のハードルが低いサービスではあるものの、慢性的な利用は利益を圧迫する原因となりかねませんので注意しましょう。
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