法人や個人事業主にとって、審査基準が緩くスピーディーな融資が見込めるビジネスローンは心強い味方です。
銀行融資や日本政策金融国庫と比べて使い勝手が良いローンであるものの、誰でも借入できるという訳ではありません。
「赤字の法人でも、ビジネスローンの借入はできる?」
「金融ブラックの個人事業主でも必ず借りれるビジネスローンはある?」
金融ブラックとビジネスローンの関係や、ローン契約が厳しい際の資金調達方法について、大手FG出身の筆者が分かりやすく解説します。
資金繰りに困っている経営者の方は、ぜひ参考にしてください。
大手フィナンシャルグループ出身。外国支社や海外顧客の対応・海外のクレジットカード加盟店とのやり取りなど、銀行業務も含めた金融業全般に幅広く携わる。その後、育児と仕事の両立を求めライターへ転身。経歴を活かしつつもエビデンスに基づいた説得力あるライティングを心がけ、これまでに約200本以上の金融系記事を執筆。現在8年目。
ビジネスローンにおけるブラックとは
「金融ブラックだから審査に落ちた」「返済期限を過ぎてしまったからブラックリストに載ったかもしれない」など、金融関係で“ブラック”という言葉を耳にしたことがある方も多いでしょう。
通常「ブラック」と言うと、要注意・監視を必要とする人物の情報を記載するブラックリストを指す言葉ですが、ローン審査など金融関係で使われる場合は少し意味が異なります。
金融関係のシーンにおいて使われる“ブラック”とは「信用情報機関に何かしらの事故情報が保管されている」ことを意味し、実際にブラックリストという帳簿が存在する訳ではありません。
金融機関との取引がある全ての人の幅広い情報を収集する信用情報機関にて、事故情報と呼ばれるマイナスイメージの情報が保管されていることを “金融ブラック”や“ブラック”と呼びます。
現在日本には、
- 全国銀行個人信用情報センター
- CIC(CREDIT INFORMATION CENTER)
- 日本信用情報機構
と3つの情報機関があり、特に日本信用情報機構は法人の信用情報も収集しています。
ブラックの判断基準「事故情報」とは?
信用情報機関が保管する情報は多岐にわたり、銀行・クレジットカード会社・消費者金融・ローン会社など国内の金融機関との取引履歴の他、申し込みの際に記入した個人情報も収集の対象です。
様々な情報がある中で、金融ブラックかどうかを判断するための基準となっているのが「事故情報」の有無です。
【事故情報】
名称 |
概要 |
延滞 |
契約で決められた期日に返済が行われないこと |
強制回収 |
返済が滞り、金融機関が強制的に契約の解除を行うこと |
債務整理 |
任意整理や会社更生などの手続きを行うこと |
代位弁済 |
本人ではなく、保証会社などの第三者が肩代わりして返済すること |
破産申込 |
裁判所に返済できない旨の申請を行い、借金を免除してもらうこと |
債権譲渡(移管) |
金融機関側での返済金回収が困難を極め、回収機構へ債権を譲渡すること |
保証債務未履行 |
連帯保証人に登録されたものの、保証人として支払う義務が発生した際にその支払いを行っていないこと |
個人・法人共に、信用情報機関に1つでも上記の事故情報が載っていると「金融ブラック」と判断されます。
事故情報は、金額の大きさや未払い期間の長さに関わらず信用情報として記録され、金融関係の審査に大きな影響を与えるでしょう。
ビジネスローンにおけるブラックと非ブラックの境界線は?
ビジネスローンでは「会社の情報」と「代表者の情報」の2つをチェックしながら審査が進められます。
具体的に、どのような情報が金融ブラックだと判断されるのかを表にまとめてみました。
金融ブラック |
ブラックではない |
代表者の信用情報に事故情報がある 会社の信用情報に事故情報がある 慢性的な債務超過 長期間に渡る税金滞納 (申込ブラック) |
赤字決算 債務超過(短期、解消見込みあり) 税金滞納(短期) 他ローン会社への借金がある 代表者が個人的に借入をしている |
会社の経営状況が赤字、資金繰りが上手くいかずに税金が未納のままになっていても、ビジネスローンにおいての金融ブラックとは判断されません。
債務超過や税金滞納状態であったとしても、それが一時的なもので原因や返済見込みなどをきちんと分析・説明できれば、審査通過は十分可能です。
一方で、会社の信用情報に事故情報が載っている・社長や事業主などの会社の代表者の信用情報が金融ブラックでは、いくら会社の業績が良くても即刻“金融ブラック”の判定を受けてしまうでしょう。
資金調達を焦るがあまり陥りがちな「申込ブラック」についても注意が必要です。
申込ブラックとは、短期間にいくつもの金融機関に立て続けに申込みを行うことを指した言葉です。
契約の有無に関わらず、ローンへの申し込み履歴も情報として保管されます。
数日の間に手当たり次第に申込みをするなど明らかに不自然な申込件数があると、資金繰りが相当申告であると読み取られ審査で不利に働くことがあるでしょう。
ブラックOKなビジネスローンはある?
金融ブラックの場合、ビジネスローンが借りられる可能性は「絶対にゼロ」とは言えないものの「限りなくゼロと近い」と言えます。
大手銀行を避け、比較的審査が甘いとされるノンバンクやネットバンクを選択したとしても借りられる可能性はほぼないと思っておきましょう。
ただでさえ信用情報に不安がある状況で、限りなくゼロに近い審査をいくつも受けて申込ブラックを加速させるのは得策ではありません。
ビジネスローン以外にも、会社の資金繰りを改善させる手段は存在します。
ビジネスローンでの借入にこだわらず、金融ブラックという状況でも資金調達できる「別の手段」を検討するのが現実的です。
不安ならビジネスローンの審査前にブラックかどうか確認を
信用情報機関に載っている情報は「開示請求」をすることで、自身でその内容を確認することができます。
【開示請求の方法と特徴】
|
インターネット |
郵送 |
窓口 |
手続き方法 |
スマホアプリやホームページの専用フォームから手続き |
信用情報機関のHPから書類を印刷して郵送 |
信用情報機関の窓口に出向いて手続き |
所要期間 |
数日 |
数週間 |
即日 |
費用 |
1000円前後 |
1000円前後 |
500円前後 |
備考 |
本人or会社の代表者のみ手続き可 |
代理人による申請も可(別途必要書類あり) |
感染症対策等で行っていない場合もある |
どの信用情報機関に請求するかによって多少の違いはありますが、請求方法による違いは上記の通りです。
いずれの方法で手続きした場合でも、開示内容に違いは出ません。
開示された情報の中でチェックするべき項目は「支払遅延情報」と「異参サ内容」の2箇所です。
ここに「ブラックの判断基準「事故情報」とは?」で紹介した事故情報が記載されていると金融ブラックだと判断されます。
一方、過去に金融事故を起こしていても、一定期間が過ぎれば履歴が消えている場合もあるでしょう。
有料にはなりますが、自分や会社の信用情報がブラックかどうか(「事故情報」があるかどうか)を知る手段は開示請求以外にありません。
不安を解消するため、一度開示請求を行ってみるのも良いでしょう。
ブラックOKな資金調達の方法2選
会社や代表者の信用情報がブラックであっても、資金調達をする方法は残されています。
ビジネスローンの審査が通らないとお悩みの方は、以下2つの手段を使って経営の立て直しを図りましょう。
有担保ローン
有担保ローンとは、土地や建物などを担保にしてお金を借りるタイプのローン契約です。
担保を入れることで貸し倒れのリスクが軽減されることから、一般的なローン契約よりも審査難易度が下がる場合があります。
【有担保ローンの種類と担保の内容】
- 不動産担保ローン 担保:土地・建物・工場・駐車場など
- ABL保証ローン 担保:在庫・車両・設備機器などの動産
- 売掛債権担保ローン 担保:売掛債権
いずれのローンも、担保の価値が大きいほど高額の融資を受けられる可能性があります。
担保にできる物がある方は、是非検討してみてください。
ファクタリング
ファクタリングとは、売掛債権を譲渡して入金前に資金化させる資金調達方法です。
ローンのような借入とは異なり定期的な返済はなく、会社や代表者が金融ブラックか否かという点はあまり重要視されません。
売掛債権の価値が大きいほど高額の現金を調達できます。
入金予定の売掛債権がある方は、ぜひ検討してみてください。
まとめ
当記事では、金融ブラックの会社や経営者とビジネスローンの審査について解説しました。
- 赤字決算や借金ではブラックと判断されない
- 会社の信用情報が金融ブラックの場合、ビジネスローンの利用は非常に厳しい
- 代表者の信用情報が金融ブラックの場合、ビジネスローンの利用は非常に厳しい
- ローン契約が厳しい場合には、ファクタリングや有担保ローンでの資金調達がおすすめ
どのような種類のローンでも、借りられるか否かは審査次第なので「絶対」とは言い切れません。
しかし、会社・代表者自身の信用情報が金融ブラックの場合、可能性は限りなくゼロに近いです。
確実に金融ブラックだと分かっている場合には「審査が激甘なローン会社はないか?」と考えるのではなく“融資以外の資金調達方法”に目を向けることをおすすめします。
また、ビジネスローンの審査に不安が残る場合には、信用情報の確認をしてみるのもよいでしょう。
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